お疲れ様です!
インフラ業界総合職で現在入社5年目のゆうゆうと申します!
就活生・転職者から以下のような質問をよく受けます。
- JRと私鉄って何が違うの?
- JR東日本とJR東海を差別化するにはどうしたらいいの?
大丈夫です!
今回の記事を読んで頂ければ、JR各社に対する業界研究が完了します!
今回説明するのは以下の内容です!
- JRとは
- JR各社の特色
- JRの今後の動向
また、今回の記事では以下のような読者を想定しています!
- 鉄道業界を志望する就活生
- 鉄道業界を志望する転職者
- 鉄道業界に投資をしようか検討してる人
それでは説明していきます!
JRとは
私鉄との違い
JRも私鉄も同じ鉄道業界に属する企業群です。
簡単にですがそれぞれの違いについて説明していきます。
JRに属する企業と私鉄に属する企業
JRに属する企業
JRとは以下の企業の総称です。
- JR東日本
- JR東海
- JR西日本
- JR九州
- JR四国
- JR北海道
- JR貨物
- (JR総研)
私鉄に属する企業
私鉄とは以下の企業の総称です。
- 東京メトロ
- 東急
- 東武鉄道
- 小田急電鉄
- 西武HD
- 京王電鉄
- 京浜急行電鉄
- 京成電鉄
- 相鉄HD
- 阪急阪神HD
- 近鉄グループHD
- 京阪HD
- 南海電気鉄道
- 名古屋鉄道
- 西日本鉄道
などです。
私鉄に興味がある方は以下の記事を読んでみてください!
JRと私鉄の具体的な相違点
JRと私鉄の大きな違いは次の2点です。
- 企業の成り立ち
- 収益構造
企業の成り立ち
JRは「国営事業から民間企業」になった鉄道会社
私鉄は「初めから民間企業」だった鉄道会社
です。
後ほど詳しく説明します。
収益構造
JR各社の収益のほとんどは鉄道事業ですが、私鉄の収益のほとんどが非鉄道事業です。
具体例
下の表はJR最大の鉄道会社「JR東日本」の2019年度の期末決算です。
決算から見てわかるのは、8割以上が運輸収入という特徴ですね。
2019年度 | |
営業収益 | 20,610億円 |
運輸収益 | 17,928億円 |
一方、下の表は私鉄で1番売上高の大きい「東急」の2019年度の期末決算です。
2019年度実績 | |
営業収益 | 11,642億円 |
交通営業収益 | 2,136億円 |
決算書から鉄道(交通営業収益)の占める割合が営業収益の2割程度しかないことがわかります。
東京メトロのように私鉄でも鉄道収益の割合が高い企業もありますが、やはりこの収益構造の違いもJRと私鉄の大きな違いです。
日本国有鉄道とは
JRの説明をする前に日本国有鉄道について説明させてください。
皆さんは日本国有鉄道という名前を聞いたことがありますか?
JR各社はかつて日本国有鉄道(通称「国鉄」)と言う名の公共企業でした。
日本国有鉄道発足の経緯としては、1949年に国が管理していた鉄道を一定の経営の自由を持たせ、一般の会社のような効率的な事業経営を行わせることでした。
その結果、半分民間企業で半分国営企業のような複雑な企業ができたのでした。
日本国有鉄道の経営状態の悪化
ここからは少し話が難しくなるので「JR各社の特色」まで読み飛ばしてもらっても構いません。
日本国有鉄道は半分国営企業のようなものなので、国の意向には逆らえないという特徴を持っていました。
そのため国から、戦争から帰ってきた兵士を大量に採用することを強制され、次第に人件費が経営を圧迫していきました。
1964年に日本国有鉄道は赤字に転落します。
さらに労働組合の活動が激化し、経営状態はどんどん悪くなります。
JRの発足
1987年に中曽根内閣の行政改革で日本国有鉄道は以下の企業に分割されました。
- JR東日本
- JR東海
- JR西日本
- JR九州
- JR四国
- JR北海道
- JR貨物
- (JR総研)
こうして、僕たちの知っているJRが生まれたのでした。
ちなみにJR誕生の背景は以下の4つです。
- 累積債務の帳消しのため
- 余剰人員削減のため
- 労働組合を分散させるため
- 地域密着型企業に生まれ変わるため
JR各社の特色
どのJRにも言えるのがコロナ影響が非常に大きいことですね。
2020年度決算ではJR貨物以外は全て最終決算が赤字でした。
JR東日本
- 売上高:1兆9,786億円(2022年3月期)
- 営業利益:▲1,539億円
- 自己資本比率:28.4%
- 車両数:1万2,770両
- 従業員数:4万9780人
- 駅数:1,676駅
- 営業キロ:7,401キロ
ドル箱路線である「山手線」を持つ最強の鉄道会社JR東日本。
鉄道事業だけでなく、小売業や不動産でも強い会社なのが魅力的ですよね。
JR東日本の差別化ポイント
JR東日本の差別化ポイントは以下の3つです。
- 新しいこと好き
- 発電所を所有
- 鉄道メーカーを所有
新しいこと好き
JR東日本はインフラ企業には珍しく新しい技術(特にIT分野)に多くの投資を行なっています。
SUICAは本当に素晴らしいですし、またコロナ禍で始まった新幹線による貨物輸送も面白い取り組みですよね。
インフラ企業は安定思考になりがちですが、JR東日本出身は挑戦を推奨する企業文化が根付いている「攻めのインフラ企業」です。
※JR東日本出身の起業家も多いですしね。
発電所を所有
実はJR東日本はJRの中で鉄道企業では唯一発電所を所有してます。
理由としては、電力会社(東京電力など)のトラブルで電力供給が滞ったとしても自前の発電所で鉄道を動かすためです。
というのも、そのためには電力設備を運営するための技術者の育成や法律の勉強など余計なコストが多くかかります。
それを外注せずにやってしまうところが、JR東日本の首都圏を支える使命感を感じますよね。
ちなみに、JR東日本は川崎地区に火力発電所、新潟の小千谷地区に水力発電所を持っています。
今後も気候変動が激化する中で、2重3重の備えをしているのは心強いですよね!
鉄道メーカーを所有
JR東日本は自社内に鉄道メーカーも所有しています。
本来、鉄道会社は鉄道を走らせる会社であって、鉄道を作るのは日立製作所や川崎重工のような鉄道メーカーが作ります。
しかし、JR東日本は総合車両製作所という鉄道メーカーを子会社に所有しているので、完全オーダーメイドの鉄道車両が作れてしまいます。
JR東海
- 売上高:9,351億円(2022年3月期)
- 営業利益:▲1,708億円
- 自己資本比率:37.9%
- 車両数:4,857両
- 従業員数:3万0,153人
- 駅数:405駅
- 営業キロ:1,970キロ
東京と大阪を繋ぐドル箱路線「東海道新幹線」を所有するJR東海
リニア中央新幹線の進捗はかなり緩やかですよね。
JR東海の差別化ポイント
JR東海の差別化ポイントは以下の2つです。
- 超新幹線特化型企業
- 研究所を自前で持つ
超新幹線特化型企業
JR東海は他のJR各社とは毛色が違います。
下の表はJR東海の2020年3月期の決算の資料ですが新幹線と在来線(新幹線以外の鉄道)で収入が全然違うことがわかります。
2019年度 | |
総運輸収入 | 13,656億円 |
新幹線収入 | 12,613億円 |
在来線収入 | 1,042億円 |
新幹線収入1兆2,918億円に対して、在来線収入は1,042億円です。
新幹線収入が在来線の10倍以上稼いでます。
ちなみに下の表にあるようにJR東日本では2020年3月期の決算資料を確認すると新幹線収入5,655億円に対して在来線収入は1兆2,272億円です。
つまり、JR東日本の収益実績では、新幹線収入は在来線収入の半分以下ですね。
2019年度実績 | |
総鉄道運輸収入 | 17,928億円 |
新幹線運輸収入 | 5,655億円 |
在来線運輸収入 | 12,272億円 |
このようにJR東海の収入は新幹線にかなり特化しています。
また、地域密着の動きが他のJRに比べると薄い印象もありますね。
研究所を自前で持つ
自社内に研究所を持っているのもJR東海のすごいところです。
愛知県小牧市内にある小牧研究施設で自社開発車両の研究が行われています。
2018年に完成したN700Sもこの研究施設で生まれています。
ちなみに、この場所に勤務になるとアクセスが非常に悪いため、人と会う回数が減るらしいです。笑
JR西日本
- 売上高:10,311億円(2022年3月期)
- 営業利益:▲1,190億円
- 自己資本比率:24.5%
- 車両数:6,503両
- 従業員数:4万7,984人
- 駅数:1,174駅
- 営業キロ:4,903キロ
近畿から博多まで、京都や奈良など日本の古都に事業領域を持つJR西日本
山陽新幹線と北陸新幹線が鉄道収益の大きな柱になっています。
JR西日本の差別化ポイント
JR西日本の差別化ポイントですは以下の3つです。
- 安全
- インバウンド
- 経営の多角化
安全
2005年4月25日にJR西日本は福知山線列車事故を起こしています。
速度を出しすぎた電車がカーブを曲がりきれずに脱線し、乗客と運転士合わせて107名がなくなり、562名が負傷する大きな事故です。
そのため、JR西日本は安全への投資及び研修を非常に多く行なっています。
現在は社員のうち半分以上が事故後入社となっており、今まで以上に事故を風化させないための取り組みを行うために、吹田にある社員研修センターに事故車両を保存する予定となってます。
搬入自体は2023年から行われる予定で、社員教育に使われる予定です。
インバウンド
コロナ前、JR西日本の経営はインバウンド(外国人旅行者)によって非常に好調でした。
日本の物価が安くなることによる外国人旅行者の増加は、外国人旅行者に大人気な観光地へのアクセスを担うJR西日本にとって非常に相性が良く追い風になっていました。
コロナが開けた後、海外旅行の需要が一気に増えるのは容易に想像できますよね。笑
その時までに今まで以上の価値を提供できすかがJR西日本の面白さだと思います!
経営の多角化
JR西日本はコロナ前から「鉄道に頼りすぎているから不動産事業を育てよう」と成長のためにホテル事業に多くの投資を行なっていました。
しかし、コロナが広まって分かったのが「ホテル事業は移動のニーズがないと収益がないこと」でした。
つまり、鉄道事業以外の分野にリスク分散ができてなかったのです。
そのため、JR西日本では中期経営計画の見直しを行い「経営の多角化」を目指して取り組みを行なっています。
今まで安定志向であった企業ががむしゃらに挑戦するまさに転換期になると思います。
JR九州
- 売上高:3,295億円(2022年3月期)
- 営業利益:39億円
- 自己資本比率:43.8%
- 車両数:1,671両
- 従業員数:8,017人
- 駅数:568駅
- 営業キロ:2,273キロ
2016年度から上場したJR九州。
九州全域が事業領域になっています。
2021年度決算で黒字に戻した経営はさすがと言うしかないですよね。
黒字化できた一つの要因は、鉄道事業だけでなく、不動産業に力を入れ続けてきたからでしょう。
コロナ禍でも黒字化したJR九州はコロナ後はさらに進化すると思われます!
JR九州の差別化ポイント
JR九州の差別化ポイントは以下の2つです。
- 観光列車
- 西九州新幹線
観光列車
JRの中で最も観光列車に力を入れているのがJR九州です。
特に、豪華特急列車「ななつ星」は圧巻です。
僕も見たことがありますが、外観は漆のような色をしていてフォルムもすごい綺麗です。
ホテルが走っているみたいでびっくりしますよ。
他にも「ゆふいんの森」「ある列車」など素敵な列車が多いです。
観光列車にたくさん携われるのは大きな魅力ですよね!
西九州新幹線
リニアと同様、地方自治体と揉めてる西九州新幹線。
西九州新幹線が開通するとハウステンボスに新幹線で行けるようになるのがとても嬉しいですよね。
JR九州としても九州新幹線ができた時に大幅な収入増になったので、西九州新幹線を成功させると、また大きく進化しそうですよね。
JR北海道
- 売上高:1,710億円(2022年3月期)
- 営業利益:▲418億円
- 自己資本比率:61.5%
- 車両数:978両
- 従業員数:6,317人
- 駅数:348駅
- 営業キロ:2,372キロ
北海道の鉄道事業を担うJR北海道。
JR北海道の差別化ポイント
北海道新幹線
北海道新幹線は2016年に新函館北斗まで一部開業をしました。
そして、2030年度に札幌まで延伸が行われる予定です。
北海道新幹線の経営は中々苦労しているとよく聞きます。
というのも、海中トンネル内への浸水が想定量よりも多かったために、水を排出するためのポンプに想定外の支出が発生しているからです。
※ちなみにどの海中トンネルも多かれ少なかれ浸水はするものです。
航空業界国内線のドル箱路線である東京から札幌に楔を打てるかがとても楽しみですよね。
JR四国
- 売上高:311億円(2022年3月期)
- 営業利益:▲221億円
- 自己資本比率:55.5%
- 車両数:434両
- 従業員数:2,149人
- 駅数:259駅
- 営業キロ:853キロ
JR四国は四国最大の公共交通機関です。
新幹線を持っていないことJR企業でもあります。
JR四国の差別化ポイント
四国は高速道路が比較的整備されており利便性は高いです。
高速道路に対抗する形で現在鉄道網を強化しているのがJR四国の特徴です。
お互いが努力し合うことで関西からより四国に行きやすくなればなるほど、四国が活性化しますよね。
JR貨物
- 売上高:1,866億円(2022年3月期)
- 営業利益:14億円
- 自己資本比率:23.6%
- 車両数:9,908両
- 従業員数:5,472人
- 駅数:568駅
- 営業キロ:2,273キロ
全てのJR路線を走行し、全国に貨物を運ぶJR貨物。
2016年度に黒字化を果たしたことを書いてて思い出しました。
JR貨物の差別化ポイント
コロナが追い風
JRの中でコロナにより唯一恩恵を受けたJR貨物。
巣ごもり需要の増加により物流へのニーズが増えて、現在非常に好調です。
他のJR各社もJR貨物やJALを見てると人以外を輸送することを視野に入れるべきなんでしょうね。
JR総研(鉄道総合研究所)
- 経常収益:97億円(2022年3月期)
- 経常費用:139億円
- 従業員数:550人
みなさんJR総研って知ってますか?
実は全てのJRが利用できる研究所があるんです!それが公共財団法人 鉄道総研です。
この研究所での研究内容がJRおよび私鉄に共有されて鉄道業界全体の技術向上に貢献しています。
本社は東京都国立市、事業部は東京都国分寺にあります。
ちなみに内定もらうのめちゃくちゃ難しいです。
超少数精鋭部隊です!
JR総研は講演会も多く行なっているので興味がある人は見てみて欲しいです!
今後の動向
近い将来
実は在来線の収益自体はコロナ前のレベルにほぼほぼ戻りつつあります。
問題は新幹線、特にJR東海は新幹線重視の経営のため、2020年度の売り上げが前年比の55%まで下がっています。
そのため、新幹線に変わる新たな収益源の構築、固定費の削減、さらには運賃の値上げなどに舵がきられるでしょう。
少なくとも、あと3年は苦しい状況が続くのではないでしょうか?
遠い将来
鉄道の収益は人口に比例します。
そのため、少子高齢化が進むにつれて収益が減っていくのは自明です。
JR各社には今までよりも少ない人数で鉄道オペレーションの効率化が求められます。
そして、MaaSのような新たな技術に順応していくかが今後の成長に大きく関わってきそうですね!
MaaSについては「SDGsとMaaSの関係性についての記事」でも詳しく解説しています!
まとめ
今回の記事ではJRへの疑問を解消するために以下の内容を解説しました。
- JRとは
- JR各社の特色
- JRの今後の動向
ちょっと長くなりましたが、鉄道業界を希望する就活生・転職者の少しでも役に立てていたら嬉しいです。
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